チャールズ川と鴨、向かい側は雑居ビルのようにコンドミニアムが並んでいる
よくあるパターンが入り口から最上階までがワンオーナーで
設備を増やしたり修理しながら賃貸アパートとして貸したり
学生寮として大学や語学学校などに使わせたりしているケース
ここはアパートメント形式のホテルとして1日単位で部屋を貸していた
(アパートメントホテル)つまり本来の賃貸アパートとはだいぶニュアンスが違う
通常はアパートメントはどこも1年契約になっている
夏場だけ3ヶ月というのがあるがこれはバケーションシーズンだけボストンから
離れる学生達が自分の部屋をレンタルして家賃を浮かせる方法だ
アパートメントホテルは短期滞在型のキッチン付きアパートということらしい
古い建物を修理しながら使うことはとてもいいことだと思う
大学時代の学部長がボストン郊外の海沿いの街に
別荘を買った時の話をしてくれた事を思い出す
学部長: 「海岸の近くに別荘を買ったんだ」
若い俺: 「いいですね~うらやましいなあ~」
学部長: 「週末はず~っと別荘に行ってるよ」
若い俺: 「いいなあ~いいなあ~」
学部長: 「だから週末はず~っと別荘の修理だな」
若い俺: 「・・・・いいなあ~」
学部長: 「壁のペンキ塗りで1ヶ月はかかるな」
若い俺: 「・・・・いい・・・な」
学部長: 「冬になるまえに雨漏りと暖房をなんとかしないと」
若い俺: 「・・・・」
その建物の状態にもよりけりであまりに古くてオンボロだと修理も大変な作業になる
ボストンの冬の寒さは厳しく昼の12時でマイナス20度以下になる時も多かった
広大なチャールズ川が完全に凍結したように見えていかれた若者が渡ろうとして
川に落ちる事もあった
これではちょっとそこまで買い物に行くのも大変だ
だから各部屋ごとに空調や冷暖房と家電製品類はだいたい完備している
しかしアパートの場合はそれが 形だけ の場合もある
使えない暖炉の上に象の置物となんかの造花。壁にはビクトリア調?の鏡や意味不明のオブジェ類
借りた部屋には何気におしゃれっぽい調度品やオブジェがあるように見える
しかしよく見るとなんか変だ。統一感が全く感じられないなあ
なんとなく「置いてあるだけ感」がするし暖炉もあるが使えるようには見えないし多分使えない
ブラウン管TVはいいがよくわからん絵がところどころに。左側はガラス面を黒いテープで補修してある、無い方がまし
床から水があふれ出た事を受付の何をやってるのかわからないおばさんに告げると
「ちっ」舌打ちしスタッフを呼んで部屋に行かせた
スタッフは南米系のおね~ちゃんだった
その時の会話
俺: 「なんかね~食洗機使ったら床から水が噴き出したんだけど」
おね~ちゃん: 「あら~あれは使っちゃだめなのよ」
俺: 「壊れてんの?」
おね~ちゃん: 「そう、使っちゃだめよ」
俺: 「電子レンジも動かないけど?」
おね~ちゃん: 「あ~あれも壊れてるわ、でも冷蔵庫は大丈夫でしょ?」
俺: 「え~と、まあ普通に冷えるけど」
おね~ちゃん: 「テレビも映るわよね」
俺: 「まあ見えるけど」
おね~ちゃん: 「それじゃ大丈夫ね」
俺: 「何がだよ?」
おね~ちゃん: 「冷蔵庫とテレビは使えるわ」
俺: 「はあ?」
そう言って部屋から出て行った
仕方がないので奥様と二人で仲良く床掃除を始めた
噴水は止まったが床はびしょ濡れだ
食洗機をよく見ると何か貼ってあった
見事にシステムキッチンに収まっている食洗機
Please Do Not Use(使っちゃだめよん!)
壊れてたわけね。南米のおね~ちゃんが貼っていったみたいだが
・・・・・・・・・遅いからね・・・・・・・・・・今頃こんなの貼っても・・・・・
しかし床から水が湧いてくるのではなく噴き出していたのはびっくりした
これベースメント(地下)だからいいようなもの上の階だったらどないすんねん
どういう構造なんだろう
動かないが見事に収まっている電子レンジ
とりあえず部屋を借りたからのんびりしたい
電子レンジと食洗機だけ使わなきゃいいんだし
確かホームページには手入れの行き届いた風格のあるアパートメントで
近代化された設備がそろってるだど~たらこ~たらと書いてあった
確かに設備はあった 形だけだけどね
風格のある古い建物に最新設備のアパートメント そう形だけだけどね
まさか冬場にはちゃんとヒーターが入るんだろうな それも形だけとか・・・・
受付の愛想の悪い女性は実はこのコンドミニアムのオーナーだった
そして次の日からなんとなく感じていた奇妙な雰囲気の正体が明らかになっていく